No.117
 誤嚥性肺炎について

 

 誤嚥性肺炎とは、食べ物を誤って気管に吸い込んだ結果起こる肺炎だと思っていませんか。

確かに、このような明らかな誤嚥による場合もありますが、実際は夜、寝ている時に唾液や口腔内分泌物を知らず知らずのうちに誤嚥して起こる肺炎が殆どなのです。肺炎は夜に作られるのです。日本人の死因の第3位が肺炎ですが、その殆どが65歳以上です。その大多数が誤嚥性肺炎なのです。

 今回は誤嚥性肺炎の原因と予防についてお話ししましょう。誤嚥性肺炎の予防については、次のことを心がけましょう。

 (1)口腔内を清潔に保つ

 口腔は肺や胃腸の入り口です。適度な湿度と温度が保たれている口腔は細菌にとって居心地よく、歯磨きやうがいを怠るとすぐに細菌が繫殖します。そのため歯磨きをしっかり行い、口の中の細菌を繁殖させないこと、そして肺へ運び入れないことが重要です。

 (2)話をしながら食べない

 お話をしながら物を飲み込むと、発声の最中には、気管の入り口にある喉頭蓋は気管に蓋をしていません。この時同時に飲み込もうとすると、健常な成人でも飲み違いを経験することがあります。高齢者の方には食べることに集中していただき、飲み込む瞬間には返事を要する問いかけをしないことです。

 (3)嚥下反射を改善する

 嚥下とは物を飲み下すことをいいます。これがうまくいかない状態を嚥下障害といい、誤嚥性肺炎を引き起こす原因のひとつです。誤嚥は食べ始めのひとくち目に起こりやすいので、食べる前に準備運動を行うと効果があります。顔や首の筋肉の緊張を解いたり、鍛えたりします。

 (4)胃液の逆流を防ぐ

 ゲップや胸やけなどがある場合は、逆流性食道炎が考えられます。食後すぐに横にならずに2時間ほど座って身体を起こしていることで、逆流を防止できます。逆流性食道炎が心配な方は、胃の内視鏡検査をお勧めします。

 (5)肺炎球菌ワクチンを用いる

 肺炎の原因となる細菌で最も多いのが「肺炎球菌」という菌です。この菌による肺炎を予防するためには、日本では2種類の肺炎球菌予防ワクチンがあります。65歳以上の方は、肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス)の接種が定期接種となっています。もう1種類のワクチン(プレベナー)は自費接種ですが、予防効果に優れていることが実証されています。この2種類のワクチンを上手に使い分けることが、最大の肺炎予防策になります。成田クリニックでは1回目はニューモバックスを、2回目はプレベナーをお勧めしています。