No. 121より
COPDについて

 今回は、以前取り上げたCOPDについて再度お話したいと思います。慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)で、英語の頭文字からCOPDと呼ばれています。

喫煙が大きく関係する肺の疾患であり、放っておくと息苦しさ、筋力や身体機能の低下などから生活の質を大きく落とす病気とされています。そのため、健康日本21(厚生労働省の、国民の健康づくりを総合的に推進するための基本的な方針)にも取り上げられており、がん、循環器疾患、糖尿病と並んで対策を必要とする主要な生活習慣病として考えられている病気です。

 そもそも「呼吸」とは吸気と呼気から成り立ちますが、COPDは息が吐きづらくなることで知られる病気です。タバコ煙を主とする有害物質を長期にわたり吸入することで気管支や肺に炎症が起こり発症します。細い気管支に炎症が起こると気道の壁が厚くなり、気道内に分泌液が貯留していきます。さらに炎症が続くと、「肺胞」と呼ばれる気管支末端の袋状の構造が破壊され、縮みにくくなることで、息を吐く時の空気の流れが悪くなります。そして病名の通り「閉塞」してしまい、息苦しさにつながるのです。

 COPDの代表的な症状には咳、痰、息切れなどがあります。いずれも病初期には無自覚に近いですが、坂道や階段を上った際に息切れがすると感じたら注意が必要です。病気が進行すると、平地の歩行でも息が苦しくなり、初期は少し休めばすぐに楽になったのに、だんだんと回復までに長い休憩が必要になってきます。

 COPDを進行させないためには禁煙が最も重要です。禁煙すれば、その後の肺の機能を残してくれることが知られていますので、なるべく早めの禁煙をお勧めします。

 息苦しさなどの症状が強い場合には、息を吐きやすくする気管支拡張薬、炎症を抑えるステロイド薬などの薬により肺の機能をサポートします。また、病状が進行すると、身体活動の低下からくる不安で精神的ストレスが増加し、抑うつ傾向に陥りやすくなります。さらに痩せ型となる方が多く、体重減少や活動低下で予後が悪くなります。COPDは進行すると治らないやっかいな病気ですが、早期に発見できれば禁煙で病気の進行を遅らせ、治療を受けることで自覚症状を軽くし、同年代の健康人と同じような生活を送ることができます。

 COPDは病初期の自覚症状がほとんどなく、気づきにくい病気です。統計では、日本全体で500万人以上のCOPD患者がいると推測されていますが、実際に診断され通院しているのは20万人程度しかいないといわれています。つまり現在治療されているのは氷山の一角に過ぎず、多くの患者がまだ隠れているのです。

「症状が強くなって受診したら重症だった」とならぬよう、成田クリニックでご相談下さい。