No. 122より
飲んではいけないクスリ

「飲んではいけないクスリ!」週刊誌の見出しが新聞広告に出る。薬の批判を記事にすると、その雑誌の売り上げがものすごく増えるとのことです。よく知られている副作用を大々的に書いて、恐怖心を煽る・・・。そしてその広告を見て、「飲んではいけない薬」を処方されている患者さんが慌てて来院する。こんなことが、「クスリ批判の雑誌」が出版されるたびに、繰り返されています。

 結論は、「飲んではいけない薬」はありません! 但し条件があります。あなたの体調を良く知っている医師が処方した薬であることです。すべての薬に副作用が起こる可能性はありますが、医師はあなたにとって大きなメリットがあると判断した時に薬を処方します。

 薬を服用れている皆様方にお願いがあります。一つは薬のメリットとデメリットをきちんと知ること。きちんと調べるか、分からない場合には主治医に聞いて下さい。もう一つは、これが一番大事です。自己判断で、薬を止めないこと!

 この機会に、週刊誌によく登場する降圧薬の副作用について、ご説明したいと思います。すべての降圧薬に共通して、一番気をつけないといけないのは、血圧の下がり過ぎです。これは副作用というよりも薬の効果そのものなのですが、降圧薬を使う際に最も多い有害事象です。血圧が下がりすぎると、立ちくらみがしたり、ふらついたり、時には転んだりして大変危険です。また、血圧が下がると腎臓の血行が悪くなって腎機能が低下することがあり、元来腎臓の悪い人は注意が必要です。そのほか、それぞれの降圧薬に特有の副作用もあります。

 血管を拡張して血圧を下げるカルシウム拮抗薬では、お酒を飲んだ時と同様に血管が広がることで、顔が赤くなったり頭痛がしたりすることがあります。手足のむくみや、歯茎が腫れたり、日光過敏症という症状が生じることもあります。

 ACE阻害薬では、咳が出やすくなるという副作用があります。痰を伴わないいわゆる「空咳」と言われる咳が出ます。

腎機能や肝機能の異常、尿酸値の上昇、カリウムなどの電解質の変化など、血液検査をしないとわからない副作用もありますので、降圧薬を内服されている方は、半年に1回程度は血液検査をして副作用のチェックをする必要があります(これは降圧薬に限らず、薬を長く使う場合には必要なことです)。

どんな薬でも、使用に際しては、体調や検査値の変化をよく見ながら、細心の注意が必要なのは言うまでもありません。何か気になることがあったら、遠慮なく医師にご相談下さい。

 その一方で、十分に注意していれば副作用を怖がりすぎる必要はありません。多くの場合、副作用よりも、病気を放置することの危険の方がはるかに大きいので、注意しながら薬を適切に使って、病気をコントロールしていくことが重要だと思います。