No. 124より
におい(嗅覚)について

 2020年の新型コロナ感染症の流行以来、嗅覚、味覚障害を訴える患者さんに出会うことが多くなりました。

 嗅覚障害を起こす原因としては様々な病気がありますが、主に3つのタイプに分けられます。

①気導性嗅覚障害

副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎、鼻中隔弯曲症などが原因となって、においのセンサーである嗅粘膜に届くルートを遮断することによって起こるものです。

②嗅神経性嗅覚障害

嗅粘膜に分布している嗅神経自体が新型コロナウィルスや感冒などのウィルス感染症や薬剤の影響などにより障害を受けて、においを感じにくくなるものと、転倒などで頭部を打った際に嗅神経の末端(嗅糸)がちぎれてしまうものがあります。

中枢性嗅覚障害

頭を強く打つような事故などで脳挫傷をおこしてしまった後、または脳の病気(脳腫瘍、脳出血、脳梗塞など)が原因となって、脳がにおいの情報を受け取れなくなることで生じる嗅覚障害です。パーキンソン病やアルツハイマー型認知症などの神経変性疾患にも嗅覚障害が合併することが知られています。

 嗅覚障害は、原因となるそれぞれの病気を治す治療が基本となります。

①気導性嗅覚障害の治療は?

副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などの炎症が原因の場合、消炎作用のある薬の内服や点鼻、ネブライザー治療などを行います。

慢性副鼻腔炎による鼻茸や、鼻中隔弯曲症などで物理的に空気の通りが悪くなっているような場合は、手術を行う場合もあります。

②嗅神経性嗅覚障害の治療は?

障害を受けた神経の働きを活性化するためのステロイド剤の点鼻や内服、亜鉛製剤、ビタミンB12、漢方薬などを処方します。

嗅神経が原因で起こる嗅覚障害は、気導性嗅覚障害に比べて改善が難しいため、治療期間も数ヶ月~数年程度の長期に及ぶことがあり、状態によっては障害が残る場合もあります。

③中枢性嗅覚障害の治療は?

完治はなかなか困難ですが、亜鉛製剤、ビタミンB12、漢方薬などで効果がみられる場合もあります。これは主に内科、脳神経外科が担当します。

 いずれにしても嗅覚障害の治り方には個人差があり、時間をかけてじっくりと治療を続けることが重要です。

気導性嗅覚障害などで耳鼻科的治療を要する場合は、耳鼻咽喉科を紹介いたしますので、成田クリニックにどうぞご相談下さい。